「ぶさいくな顔してるね、」
「………………」
「君の虫みたいな頭じゃあ無駄無駄!」
爽やかな笑顔でものすごくひどいことを言われてこいつほんと最低って思った。「ね、空が青くて風が気持ちいいから外でひなたぼっこしよう」
むかつくくらい綺麗な笑顔でそう言うものだから何だか毒気を抜かれてつられて笑う。染みのようにこびりついてとれない暗澹とした気持ちをこの瞬間ばかりは忘れられた。「あーあ、」
「世界はやっぱり、美しいなあ」
そんな呟きが耳をかすめた。目の前に広がる光景はちがわない筈なのに見てるものはそれぞれちがう気がして胸が苦しくて鮮やかなエメラルドグリーンと同じ世界が見えたらいいのにと思った。「まァた、くだらないこと考えてるんでしょう」
くだらないってなんだよ。適当にむしった草を抗議がわりに投げつけた。そんなつもりじゃなかったのに(何の奇跡が働いたのか)見事顔に命中してしまって、本当にどうしようもないですねあははははーとか笑ってるけど笑ってるけど!瞳がまったく笑ってないからあの、余計、ちょっと怖かった。びくびくしていると「ぶっっ!」呼吸困難になりそうなくらい笑い転げてやがったのでわーほんとこいつって最低。(本日二度目)それでもまあいいかって。こんな風な毎日が、って。…………思って目を伏せた。するとイオンの名前を呼ぶ声。「、君はね(、言葉にならないなあ)君は、最高の友であり絶対の理想であり鮮やかな希望であり、この世界はいつだって真っ黒で灰色の空では飛べないと思っていた僕の(希求したすべてで、つまりああ名前をつけるなら、これが一番相応しい)───僕の、命、なんです」
「、ありがとう」
それがさよならの合図だったなんて、知らなかったんだ。
- end -